PURPLE

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林 詩硯

針の落ちる音

  • ©︎Lin Shihyen

会期: 2024年3月27日[水]–4月14日[日]
時間: 13:00-20:00[平日] 11:00-19:00[土・日・祝]
*会期中無休

PURPLEでは、台湾出身の写真家・林詩硯の「針の落ちる音」を開催します。自傷行為と向き合うひとりひとりの存在を写しとったポートレートは、世界に通う生の揺らぎと静かな力に満ちています。

 

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柔らかな自然光のもと、静かに照らし出されるひとりと、身辺の光景。
影の混じる奥行きと、空気の立体感が印象的な写真は、私たちが見ることによってはじめて存在が生起してくるようです。
 
時間と共にある傷跡。命から生じるいびつさ。生の揺らぎ。
日常のなかの痛みは光によって息づき、ひとりひとりがその孤独においてつながりを帯びることを、林の写真は語りかけます。
向き合って撮ることの、その眼差しの可能性に打たれる初写真集。
 
 
(『針の落ちる音』書籍概要より引用)
 
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「痛みの唯一の共通点とは、他人と共有できない体験である。

しかし、その共有できない痛みから生まれた孤独感はみんな同じだ。」と韓国の人権活動家のオムギホ氏は言う。

 

私が自傷行為を始めて14年経った。自傷癖があるわけではないが、いまだにやってしまう時がある。両親や精神科の先生含めた周りの人たちからは、

それを知られる度に「死にたいのか?」と聞かれていた。こうした問いに当時の自分ははっきり反論することはできなかったが、

その言葉に対して常に違和感を覚えていた。その時の私は死への恐怖を覚えるために自傷を始め、裂いた肌色から赤色が流れてきた時、

本能的に怯えた。

 

その反応の底には、きっと生への欲求があるだろう。

 

気づいたら30歳を過ぎてしまい、今考えてみれば、命というのは、私が若い頃に思っていたよりずっと強いものなのだ。

その色んな形の強さをこの目で見たかった。感情が潮のように日々満ち引き、それでも時間の流れはいつも静かで、風景の中に光っている。

写真になったら、生きている証になれるだろうか。

 

いつか、その共有できない痛みから生まれた孤独感が和らぐように。

 

 

                                                                                                                         林詩硯

林 詩硯|Lin Shihyen

1991年台湾台北生まれ。東京藝術大学美術研究科先端藝術現科卒業。


​​身体と精神の関係性に関心を持ち、ポートレイトを中心とした作品を制作。2023年第3回 PITCH GRANT 受賞。


主な個展は「針の落ちる音」(Totem Pole Photo Gallery 2022 / ニコンサロン 2024)






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