山元彩香
We are Made of Grass, Soil, and Trees
©︎Ayaka Yamamoto
2026年3月28日[土]-4月26日[日]
時間:13:00-19:00
休廊:月・火
山元彩香は、人間の身体に宿る記憶や潜在的な状態といった不可視の層に着目し、それがいかにして像として立ち現れるのかを問い続けてきた写真家です。
これまで山元は、エストニア、ロシア、マラウイ、ジョージア、沖縄など、歴史や記憶の痕跡が現在にも息づく土地に身を置き、現地で出会った人々と向き合いながら制作を重ねてきました。本展では、2012年から2023年にかけて、言語や文化の異なる土地での長期滞在を通じて生まれたポートレート作品を中心に紹介します。光や距離、沈黙のなかで生じる身体のわずかな変化に目を凝らしながら、時間をかけて被写体と対峙するそのまなざしは、撮る者と撮られる者のあいだに生まれる流動的な相互関係の瞬間を捉えています。
撮影に先立ち、山元は被写体に問いを投げかけます。それは、何を信じ、何によってかたちづくられているのかといった、その人の在り方や内的な感覚に向けられた対話です。その応答は必ずしも言葉として示されるのではなく、やがて像のなかに滲み出ることがあります。衣装はすべて撮影地で用意され、人物や場所も現地でのコミュニケーションを通じて決定されます。明確な言語に依拠するのではなく、声の調子や身振り、共有する時間のなかで関係が築かれていきます。日常の役割からいったん距離を置いた姿で写された人物像は、特定の属性へと固定されることなく、ひらかれた存在として立ち現れます。
展示作品はすべてフィルムで撮影され、暗室で手焼きされています。そのわずかな揺らぎは、像を定着させすぎないための重要な要素でもあります。近年の作品では、ポートレイトの背後にひそむ風景や土地の気配にも意識を向け、人間の身体をその場所に蓄積された記憶と響き合う存在として捉えています。
本展のタイトル「We are Made of Grass, Soil, and Trees(人は土と木と草からできている)」は、作家が読んだアイヌ神話に着想を得ています。自然と人間との距離が近く保たれている土地での経験を通じて、山元は言葉以前の感覚や、身体に宿る原初的な感受のあり方を見つめ直してきました。
本展では、身体と土地が交差するその境界に立ち、写真という媒体の持つ可能性をあらためて考える機会となるでしょう。
【関連イベント】
会期中にトークイベントを多数開催予定。
詳細はWEBサイト、SNSにて順次お知らせいたします。
山元彩香|Ayaka Yamamoto
1983年神戸市生まれ。2006年、京都精華大学芸術学部造形学科洋画コース卒業。大学では絵画を専攻するが、次第に自身の身体を用いたパフォーマンスや映像作品の制作に関心が移り、2004年にサンフランシスコへの留学をきっかけに写真の制作を始める。以降、馴染みのない国や周縁的な地域に滞在し、言語や文化が共有されない環境のなかで人々と時間をかけて向き合いながら制作を続けている。身体を器や通路のようなものとして捉え、そこに立ち現れる意識に先立つ感覚を手がかりに、撮影を通して他者と自己のあいだに生じる関係性を探りながら、人間の存在を問い続けている。
主なグループ展として「記憶は地に沁み、風を超え 日本の新進作家 vol.18」東京都写真美術館(東京、2021年)、「不易流行」東京都写真美術館(東京、2025年)、「写真と肖像 顔から風景へ」清里フォトアートミュージアム(山梨、2025年)に参加。主な個展として「Sand, Water and Dust」Taka Ishii Gallery Photography/Film (東京、2024年)が挙げられる。東欧やアフリカの各地で撮影を行い、国内外で写真展やレジデンスに参加。2019年に出版された写真集『We are Made of Grass, Soil, and Trees』(T&M Projects、2018年)でさがみはら写真新人奨励賞を受賞。東京都写真美術館(東京都)、清里フォトアートミュージアム(山梨県)、Villa Pérochon Centre d’Art Contemporain Photographique(二オール、フランス)に作品が収蔵されている。
