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2024.06.28

あらゆる時間とあらゆる霧をひとつにこりかためたような声を

©︎Hirotsugu Horii

日時: 6月28日[金] 19:00-20:00
場所: PURPLE (30名、要予約)
料金: 1,000円

ご予約はこちらからお申し込みください。定員に達しましたためお申し込みを終了いたしました。

 

個展「身体の脱ぎ方」の会期中に作家の堀井ヒロツグと写真史家の戸田昌子、デザイナーの坂田佐武郎によるトークイベントを開催します。

 

 

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「この水を超えて、彼らの船に警告する声が必要だ。わたしはそういう声を作ろう。あらゆる時間とあらゆる霧をひとつにこりかためたような

声をつくろう。」

 

以前、レイ・ブラッドベリの小説『霧笛』の一節を、戸田さんが教えてくれたことがあった。身体が超えられない距離があるとき、声だけが唯一、

線を超えていくことができる。そんなイメージを持ちながら、時々、戸田さんの軽やかな声の響きを反芻する。

 

「声」という経験には、どこか侵入的な接触の感覚が伴っている。受話器(と呼ぶのは少し時代遅れだが)が直接耳に触れる電話越しなら尚更だ。

そこでは会話が終わった後にも、しばらくの間、声の霧は残響する。そしてそれはこちらの思う通りに留まったり立ち去ったりはしない。だから

こそ「いい声」や「聞けない声」を、皮膚は聞き分けてきたように感じる。

 

一つの声の成り立ちを振り返ると、例えば地域性やジェンダー(社会的・文化的な性)が切り離せないように、そこには個人を超えた集合的な

要素が混在している。そしてまた、発話しようとする身体の中に、個人的な「言えなさ」や「日常の中には現れない何か」が意図を超えて紛れ

込んでしまうことがある。いくつもの忘れられた時間や場所が、私の声を通して今も生き続けているのかもしれない。

 

声はときに叫びにも歌にもなり、宛先を超えていく力を持つ。その一方で、言葉ばかりが氾濫するこの社会では、強さの文体を持たない声の「音」

常に取りこぼされているように見える。沈黙を守る声や、はっきりと意味を結ばない声もまた、私の中にある名付けようのない心を照らしている。

 

無形なはずの「声」が作ってきた道を、戸田さんの声を灯りにしてさまよい歩いてみたいと思う。

 

 

堀井ヒロツグ

 

 

 

 

 

堀井ヒロツグ|Hirotsugu Horii

 

写真家。静岡県生まれ。早稲田大学芸術学校空間映像科写真専攻卒業。

最近の主な展覧会に「都美セレクション2023」東京都美術館(2023)。2013年に東川町国際写真祭ポートフォリオオーディションでグランプリ、2021年にIMA nextでショートリスト(J・ポール・ゲティ美術館キュレーター:アマンダ・マドックス選 )を受賞。

 

 

 

 

 

 

戸田昌子|Masako Toda

 

1975生まれ。写真史家。東京大学大学院博士課程満期退学。

共著に『岡村昭彦の写真 生きること死ぬことのすべて』(東京都写真美術館編、美術出版社、2014年)、『Japanese Photography Magazines 1880s-1980s』(Goliga、2022年)、『日本写真史 写真雑誌 1874-1985』(平凡社)ほか多数。監修書に『いま、我々はどんな時代に生きているのか 岡村昭彦の言葉と写真』(赤々舎、2020年)、『Hisae Imai』(赤々舎、2022年)など。東京綜合写真専門学校および武蔵野美術大学非常勤講師。

 

 

©︎Frederic Froument

 

 

 

坂田左武郎|Saburo Sakata

 

1985生まれ、京都府出身。Neki inc.代表、グラフィックデザイナー。京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)情報デザイン学科を卒業。

卒業後3年間graf(大阪)にてデザイナーとして勤務し、2010年に独立。京都を拠点に、主にグラフィックデザインの分野で活動。

 

 

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