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中村千鶴子

冬のスケッチ

定価:3500円+税

寄稿:早坂大輔(BOOKNERD店主)
デザイン:須山悠里
発行人:姫野希美
発行:PURPLE
印刷・製本:八紘美術
サイズ:A4
ページ:88ページ
製本:上製本

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雪の日には、不思議なことが起こる。

薄く積もった雪は、古い土蔵や錆びたトタン、色褪せた壁や看板を静かに照らし出し、長い年月を生きてきた街の表情を鮮やかによみがえらせる。冬だけが見せる光は、ありふれた街角を、一枚の絵画のような風景へと変えていく。

中村千鶴子は、雪の日の街を歩き、その変化を静かに見つめ続けてきた。人の姿はほとんど写らない。しかし、建物の傷跡や壁の染み、古い家並みや商店には、そこで暮らした人々の気配や時間がたしかに宿っている。写真は、目の前の風景を記録するだけでなく、積み重ねられた時間そのものを映し出しているかのようだ。

都市は更新を繰り返し、古い建物は次々と姿を消していく。その一方で雪は、新しいものと古いものを等しく包み込み、異なる時代をひとつの風景のなかに溶け合わせる。過去と現在が束の間交差するその瞬間、街は静かな「スケッチ」となり、見る者の記憶や心の風景をそっと呼び覚ます。

 

本書には、雪が描き出す冬の街の美しさとともに、その土地に流れてきた時間への深いまなざしが息づいている。中村が写しているのは、風景の奥に静かに積み重なった記憶と、人が生きた時間そのものである。

 

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雪の日は不思議だ。

雪は色あせた古いものたちをまるで狙うかのように光を反射させる。

長い年月この町の風景を支えてきたものたちは色鮮やかに蘇る。

また 1 軒古い家屋が解体された。 

町の更新がどんどん加速する。 

あちこちにぽっかりと空いた空間から、 

遠い昔この町に流れた過去の時間を垣間見る。 

耳をすます。

人々は入れ替わり立ち替わりこの町に住まい、

それぞれの物語を演じては去っていく。

いつ誰がどこでどんな物語を演じたのか、

すべては静かに消えていく。

何年もの風化の蓄積があって今がある。

いつの時代のどこに生まれるか誰も選ぶことはできない。

どんな生き方をすればよかったのか。

こんな雪の日には、

心の中の風景と静かに向き合うことになる。

 

中村千鶴子 

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