PURPLEのロゴマークデザイン: 大西正一 文:姫野希美
二つの「P」の重なりが印象的なロゴマークは、京都をベースとするデザイナー、大西正一さんによって生まれました。大西さんにはこれまでも、『自然の鉛筆』『まっぷたつの風景』『沈黙とイメージ』『水を招く』など、赤々舎の大切なラインナップとなる本をデザインしていただきました。写真やイメージについて歴史に根差して思考し、人の営みとともに未来を考える本。大西さんの常に新しい挑戦を秘めた造本や、写真と言葉との関係、美しい文字組みは、それらの本の骨格を支えるものでした。
今回の「PURPLE」のロゴマークについて、大西さんのノートを紐解いてみましょう。
まず、「溶け合うこと」「混ざり合うこと」「 共同すること」という場のコンセプトが、「P」の重なりに投影されています。
「PURPLE」は、さまざまな共同 / 協働によって生まれる新たな表現の場であり、出会いの場です。古代より存在し、優美や高貴の象徴とされた「PURPLE / 紫」は、ともすると移ろいやすい色でもあり、怪しげな表情を見せることもあります。 パンクな精神も感じられます。その変容や多層性は、今後「PURPLE」という場が持つ力となる可能性を秘めています。
そうした新しい場を表現するものとして、円と縁、円が重なる場、「共同」をイメージしたロゴマークが編み出されました。 古来より二つの円の重なりは、記号学的にも結合や統一、共同を示してきたのです。
さらに「 PURPLE」の中には、二つの「P」が存在します。
この「P」には様々な意味を重ね合わせることができます。
例えば、
public 公共 / private 個人的な
person 人 / people 人々
passion 情熱 / passive 消極的な
philosophy 哲学 / physics 物理学
picture 図像 / perspective 遠近
そして、publish 出版 もまた「P」です。
一見、対照的な意味が「P」から始まる言葉には込められ、その緊張感や振れ幅こそが豊かな奥行きにつながると感じられました。二つのあいだには必ず水脈があるはずなのです。
二つの「P」に様々な意味を重ねながら、そして、二つの円(縁)の重なりがもたらす運動が、「PURPLE」に関わる全ての人に柔らかな連帯をもたらすことを想像し、今回のロゴマーク及びロゴタイプがデザインされました。これは、手が重なったようにも、旗のようにも見えるでしょう。「PURPLE」はさまざまな人々が自由に行き来できる風通しの良い場所を目指していること。その入り口となるロゴマークとロゴタイプには、人が触れてもどこかで大丈夫だと思わせる「柔らかさ」と「ユーモア」も必要と考え、丸みを持たせたフォルムが生まれたようです。
大西さんの真骨頂とも言える書体の選びも、このロゴには深く関わっています。そのお話こそ、遠からず「PURPLE」の場で語られる日を楽しみにしています。
(この記事は、大西正一さんのデザインコンセプト・ノートをもとに構成しました)