蘇厚文
流動的辺界 / SOMETHING VIBRANT
©Hou-Wen Su
会期:2024年12月12日[木]- 12月29日[日]
時間:13:00-20:00[水・木・金]
11:00-19:00[土・日]
休廊:月・火
この度、PURPLEでは、台湾の新進の作家である蘇厚文(SU HOU WEN)の日本初個展を開催いたします。
蘇は、2014年から2023年までの約10年間にわたり、自身の住む地域の河川に沿って撮影を続けました。シリーズとして編まれ刊行された同名写真集(赤々舎刊)の刊行記念展でもあります。
始点から下流まで変転してやまない河がかたちづくる地形、動植物の営み、人との関わり。
水は、色濃い生命のあり様を映し、混沌として交じり合います。
蘇の身体も、遭遇する存在に反応し、見ることを通してすべてを受け入れようとします。
河辺ではいかなるものも変容の只中にあり、目に見えない岸を行き来しているかのよう。
存在のなかに時間の層は浮かび上がり、河は記憶を書き換えながらこの時を流れゆきます。
蘇が高速道路を彷徨うようにして幾度となく撮影地を訪れ、歩きつづけ、見つづけたのは、「流転する境目」という一本の河に他なりません。
今回の展示では、空間の中に在る私たちもその境目と関係付けられ、不可思議な時間を目撃することでしょう。
------------------------------------------------
"このシリーズは、影像と文字を駆使して河の輪郭をすくい上げた作品で、2014 年から 2023 年までのおおよそ十年にわたって制作した。僕が新北市の新店区にある安坑に引っ越してから、ひらめいたアイデアでもある。(中略)
太古の昔、人と河は不可分の関係にあった。しかし、都市に住まう現代人にとって、河川はレクリエーション活動を楽しむための観光地となってしまった。河の始まりは神話となり、おかしな 石もまた忘れられたモニュメントと化してしまった。僕は心から願った。俗世を離れ、様変わりしたこの桃源郷が、河の一部になってくれればと。僕は知る由もなかった。写真におさまってしまったものたちが、果たして古くからこの地で暮らしていた住民なのか、それとも時を超えて受け継ぐ子孫なのか、もしくは都市の喧噪から離れて身を潜める隠れ人なのかを。気の向くままに歩いた。僕を惑わせ、僕の好奇心を搔き立てた人々や光景、それら物事は、記録されてしまったことでメタファーとなり、目指した生活の奥にある異質性をあぶり出してくれた。河とともにある生命は 独自のドラマを紡いでいる。糸の端は次第に綿密な線となって、流転する境目に僕を括り付けた。"
写真集あとがきより
蘇厚文|Su Hou Wen
写真家。台湾台北市在住。 写真を視覚と哲学によって探求し、グラフィックイメージ、インスタレーション、写真集、パフォーマンスなど、さまざまなメディアを駆使しながら作品を制作している。 近年は、台湾の精神文化の記憶とアイデンティティ、カップルの関係、河川文化の探求、高速道路の謎に焦点を当てた作品を発表している。 主な個展として、「在溪流上蓋一塊布」(好地下芸術空間/花蓮 2024)、「The Figures」(未命名/台北 2022)を開催した他、数多くのグループ展に参加。 2024年に写真集『流動的辺界/ SOMETHING VIBRANT』を赤々舎より刊行。